公益社団法人・電気化学会・溶融塩委員会

研究例(中高温溶融塩)

中高温域で使用する溶融塩は、種々の化合物を溶解することができ、広い電気窓を有することから様々な電気化学反応が取り扱える。また、高い温度で使用することから反応速度も大きい。
以下に、様々な研究例を、本委員会の委員により行われている内容を中心に紹介する。
  • 金属製錬

    広い電気化学窓や金属塩に対する高い溶解度を有する特性から、様々な金属製錬技術への応用が研究されている。例えばチタンの新規製錬法の研究は古くから取り組まれ、様々な新しい製錬法が提案されている1–8。 また、シリコンの新規製錬法9,10に関する研究も進められている。
  • 材料製造法

    様々な金属の電気化学反応に用いることができる特徴から、表面処理を含む材料製造法としても有望である。 また、高い温度で使用できることから、ほかの手法では困難な合金の形成も行うことができ、様々な研究が行われている。例えば、チタン11、タングステン12、シリコン13、アルミニウム合金14などの電析が多数行われている。 さらに、金属の表面窒化などの改質に関する研究も行われている15
  • リサイクル技術

    金属塩に対する高い溶解度や高温で反応を行える利点から、リサイクルを含む分離回収技術への応用研究も盛んに行われている。 リサイクルの研究が行われている例としては、アルミニウム16、チタン17,18、希土類合金19-22、超硬工具23、貴金属24などが挙げられる。
  • 原子力関連分野

    放射線耐性の高さから、原子力関連の応用研究も盛んに行われている。 使用済み核燃料の再処理技術への応用25,26やガラス固化体からの長寿命核分裂生成物の分離27に使われるのみならず、 溶融塩炉と呼ばれる核燃料や冷却材に中・高温溶融塩を使用した原子炉28などでの利用が考えられている。
  • エネルギー・環境関連分野

    高温において電解液としての性質を持つことから、液体合金電極と組み合わせた、液体金属電池が研究されている29。 また、肥料・工業用として重要であり、水素キャリアとしても注目を浴びているアンモニアの常圧合成法の研究も行われている30。 さらに、酸化物イオンを含む中高温溶融塩は、二酸化炭素を十分に溶解させることができるため、二酸化炭素を有用物質に変換する技術の反応媒体としての応用が期待され、炭素めっきやカーボンナノチューブ・メタン製造などに関する研究が報告されている31,32
  • 計算、モデリング、基礎物性

    新しいプロセスや材料設計に向けて、中高温溶融塩の構造や化学的・電気化学的な性質の把握は重要であり、様々な分析やシミュレーションを用いて基礎的な研究が行われている33


参考文献

  1. S. Takeuchi and O. Watanabe, J. Jpn. Inst. Metals, 28, 627 (1964).
  2. T. Uda, T. H. Okabe, E. Kasai, and Y. Waseda, J. Japan Inst. Metals, 61, 602 (1997).
  3. T. Takenaka, T. Suzuki, M. Ishikawa, E. Fukasawa, and M. Kawakami, Electrochemistry, 67, 661 (1999).
  4. G. Z. Chen, D. J. Fray, and T. W. Farthing, Nature, 407, 361 (2000).
  5. K. Ono and R. O. Suzuki, JOM, 54, 59 (2002).
  6. H. Noguchi, S. Natsui, T. Kikuchi, and R. O. Suzuki, Electrochemistry, 86, 82 (2018).
  7. O. Takeda, T. Ouchi, and T. H. Okabe, Metall. Mater. Trans. B, 51, 1315 (2020).
  8. S. Jiao and H. Zhu, J. Mater. Res., 21, 2172 (2006).
  9. T. Nohira, K. Yasuda, and Y. Ito, Nature Materials, 2, 397 (2003).
  10. K. Yasuda, T. Shimao, R. Hagiwara, T. Homma, and T. Nohira, J. Electrochem. Soc., 164, H5049 (2017).
  11. Y. Norikawa, M. Unoki, K. Yasuda, and T. Nohira, J. Electrochem. Soc., 169, 092523 (2022).
  12. T. Nohira, T. Ide, X. Meng, Y. Norikawa, and K. Yasuda, J. Electrochem. Soc., 168, 046505 (2021).
  13. Y. Suzuki, Y. Inoue, M. Yokota, and T. Goto, J. Electrochem. Soc., 166, D564 (2019).
  14. T. Hirai, H. Matsushima, and M. Ueda. J. Electrochem. Soc., 168, 082509 (2021).
  15. T. Goto, M. Tada, and Y. Ito, Electrochim. Acta, 39, 1107 (1994).
  16. X. Lu, Z. Zhang, T. Hiraki, O. Takeda, H. Zhu, K. Matsubae, and T. Nagasaka, Nature, 606, 511 (2022).
  17. T. H. Okabe, Y. Hamanaka, and Y. Taninouchi, Faraday Discussions, 190, 109 (2016).
  18. G. Kamimura, T. Ouchi, and T. H. Okabe, Mater. Trans., 63, 893 (2022).
  19. G. Adachi, K. Murase, K. Shinozaki, and K. Machida, Chem. Lett., 511 (1992).
  20. T. Uda, K. T. Jacob, and M. Hirasawa, Science, 289, 2326 (2000).
  21. 大石 哲雄, 小西 宏和, 野平 俊之, 田中 幹也, 碓井 建夫, 化学工学論文集, 36, 299 (2010).
  22. O. Takeda and T. H. Okabe, Metall. Mater. Trans. E, 1, 160 (2014).
  23. 安田 幸司, 萩原 理加, 電気化学, 89, 21 (2021).
  24. 大内 隆成, 岡部 徹, 日本金属学会誌, 85, 316 (2021).
  25. S. P. Fusselman, J. J. Roy, D. L. Grimmett, L. F. Grantham, C. L. Krueger, C. R. Nabelek, T. S. Storvick, T. Inoue, T. Hijikata, K. Kinoshita, Y. Sakamura, K. Uozumi, T. Kawai, and N. Takahashi, J. Electrochem. Soc., 146, 2573 (1999).
  26. 村上 毅, 飯塚 政利, 電気化学, 89, 10 (2021).
  27. Y. Katasho, K. Yasuda, T. Oishi, and T. Nohira, J. Nucl. Mater., 543, 152578 (2021).
  28. C. Bessada, D. Zanghi, M. Salanne, A. Gil-Martin, M. Gibilaro, P. Chamelot, L. Massot, A. Nezu and H. Matsuura, J. Mol. Liq., 307, 112927 (2020).
  29. T. Ouchi and D. R. Sadoway, J. Power Sources, 57, 158 (2017).
  30. 伊藤 靖彦, 水素エネルギーシステム, 36, 27 (2011).
  31. K. Otake, H. Kinoshita, T. Kikuchi, and R. O. Suzuki, Electrochim. Acta, 100, 293 (2013).
  32. R. Jiang, M. Gao, X. Mao, and D. Wang, Curr. Opin. Electrochem., 17, 38 (2019).
  33. 石井 良樹, 笠井 智, 喜古 佐太郎, 白木 康一, 大鳥 範和, 溶融塩および高温化学, 58, 97 (2015).




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