公益社団法人・電気化学会・溶融塩委員会

溶融塩とは1

溶融塩とは、文字通り溶融して液体状態になった塩の総称である。 ここで言う塩とは、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)のイオン結合によってできる化合物である。

NaClなどに代表される金属元素と非金属元素からなる無機塩は、そのほとんどが常温・常圧では固体であるが、融点以上に温度を上げることで溶融し、溶融塩となる。明確な定義はないが、使用する温度域に応じて「中温溶融塩(たとえば 423~673 K(150~400℃))」や「高温溶融塩(たとえば773 K(500℃以上))」と分けられることもある。 また、複数の塩を混合することで、融点や使用温度を下げることもできる。単に「溶融塩」といった場合、中高温溶融塩を指すことが多い。

一般に、有機オニウムカチオンと有機または無機アニオンと組み合わせると、常温付近で溶融する低融点の塩となる。このような塩を「常温溶融塩」あるいは「イオン液体」と呼ぶ。
※オニウムカチオン:第15~17族元素の単核水素化物にプロトンが付与されることで生じた陽イオン、およびこれらの水素原子を置換して得られた誘導体。

溶融塩の特徴

  • 広い使用可能温度範囲
  • 一般的に低い蒸気圧
  • 種々の物質をよく溶かす
  • 高いイオン伝導性
  • 化学的に安定
  • 広い電位窓
  • 大きな熱容量


以下に一例として、溶融塩(共晶LiCl-KCl)、イオン液体([C2C1im][TFSA])と水との物性比較表を示す。
※C2C1im:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、TFSA:ビストリフルオロメチルスルホニルアミドアニオン

溶融塩(共晶LiCl-KCl)、イオン液体([C2C1im][TFSA])の物性(水との比較)※1
LiCl-KCl2,3 [C2C1im][TFSA]4-7 H2O
組成/mol% 58.5:41.5 100 100
融点/K
(/℃)
625
(352)
255
(-18)
273
(0)
蒸気圧/kPa 0.77 at 1173 K <0.001 3.17
密度/kg m-3
(/g cm-3)
1.648 × 103
(1.648)
1.518 × 103
(1.518)
0.9771 × 103
(0.9771)
導電率/S m-1 1.572 × 102 0.83 1 × 10-4(11.2※2)
表面張力/N m−1 0.1302 0.0351 0.0719
粘度/Pa s
(/mPa s)
2.44 × 10-3
(2.44)
3.3 × 10-2
(33)
0.89 × 10-3
(0.89)
電位窓/V 3.62 4.6※3 1.23
カソード/アノードリミット反応 Li析出/Cl2発生 カチオン分解/アニオン分解※3 H2発生/O2発生
 ※1)LiCl-KCl溶融塩の物性は特に指定のないものについては723 K, 水の物性は298 Kの情報で比較している.
 ※2)1 mol dm-3 KCl水溶液(298 K)
 ※3)諸説あり。電極材料によっても異なり、一概に決めることは難しい。

代表的な中高温溶融塩


アルカリ金属・アルカリ土類金属などのカチオンと、ハロゲンなど無機のアニオンの組み合わせ
  • 塩化物:LiCl, KCl, NaCl, MgCl2, CaCl2
  • フッ化物:LiF, KF, NaF等
  • 臭化物:KBr等
  • 酸化物:CaO, SiO2, FeO, MgO, Al2O3
  • 硝酸塩:KNO3
  • 炭酸塩:Li2CO3
  • 水酸化物:KOH等
  • その他:上記の混合物

代表的なイオン液体


オニウムカチオンと、有機/無機アニオンなどの組み合わせ。以下にそれぞれの一例を示す。
  • 芳香族カチオン: アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウムなど
  • 脂肪族カチオン: アルキルピロリジニウム、4級アンモニウム、4級ホスホニウムなど
  • 無機アニオン: AlCl4-、NO3-、CN-、HSO4-など
  • 有機アニオン: CH3COO-、CH3SO3-など
  • ハロゲンを多数含むアニオン:BF4-, PF6-, CF3SO3-, NTf2-など

参考文献

  1. 電気化学会, 電気化学便覧 第6版, 丸善出版 (2013).
  2. 辻村浩行, 伊藤靖彦, Electrochemistry, 84, 263 (2016).
  3. A. J. Bard, ed. Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements, vol. X, Fused Salt Systems, Marcel Dekker (1976).
  4. H. Tokuda, K. Hayamizu, K. Ishii, M. A. B. H. Susan and M. Watanabe, J. Phys. Chem. B, 109, 6103 (2005).
  5. A. P. Froba, H. Kremer and A. Leipertz, J. Phys. Chem. B, 112, 12420 (2016).
  6. H. Matsumoto, H. Sakaebe, K. Tatsumi, M. Kikuta, E. Ishiko and M. Kono, J. Power Sources, 160, 1308 (2006).
  7. H. Matsumoto, H. Sakaebe and K. Tatsumi, J. Power Sources, 146, 45 (2005).



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